戦争とは、国家とはー。鄭義信三部作に遡る第四弾
1950~70年代にかけての戦後の影の日本史を温かくも鋭いまなざしで描いた、鄭義信三部作『たとえば野に咲く花のように』『パーマ屋スミレ』『焼肉ドラゴン』に遡る第四弾。1947年シンガポール、チャンギ刑務所。そこには、死刑執行をただただ待つ日々の中、演劇に憧れ、ぼろぼろになるまで『マクベス』を読む男がいた―。
2010年に韓国ソウルの明洞芸術劇場で鄭義信書き下ろし、ソン・ジンチェク演出で初演、その後北京公演も行い好評を博した本作を、今回は大幅に改訂し日本初演としてお届けします。戦争とは、国家とは......鄭義信が新たに描く「記録する演劇」にご期待ください。
ものがたり
1947年夏、シンガポール、チャンギ刑務所。
死刑囚のみが集められた監獄Pホールは、演劇にあこがれ、ぼろぼろになるまでシェイクスピアの『マクベス』を読んでいた朴南星(パク ナムソン)、戦犯となった自分の身を嘆いてはめそめそ泣く李文平(イ ムンピョン)、一度無罪で釈放されたにも関わらず、またつかまり二度目の死刑判決を受けるはめになった金春吉(キム チュンギル)など朝鮮人の元捕虜監視員と、元日本軍人の山形や黒田など、複雑なメンバーで構成されていた。
BC級戦犯である彼らは、わずかばかりの食料に腹をすかし、時には看守からのリンチを受け、肉体的にも精神的にも熾烈極まる日々を送っていた。
ただただ死刑執行を待つ日々......そして、ついにその日が訪れた時......。
作・演出
鄭義信
1993年に『ザ・寺山』で第38回岸田國士戯曲賞受賞。その一方、映画に進出して、同年『月はどっちに出ている』の脚本で毎日映画コンクール脚本賞、キネマ旬報脚本賞などを受賞。98年には、『愛を乞うひと』でキネマ旬報脚本賞、日本アカデミー賞最優秀脚本賞、第一回菊島隆三賞、アジア太平洋映画祭最優秀脚本賞など数々の賞を受賞した。
新国立劇場では『たとえば野に咲く花のように』『アジア温泉』の作、『焼肉ドラゴン』『パーマ屋スミレ』の作・演出を務め、初演の『焼肉ドラゴン』で、第16回読売演劇大賞優秀演出家賞、第12回鶴屋南北戯曲賞、第43回紀伊國屋演劇賞、第59回芸術選奨文部科学大臣賞を受賞した。近年では『僕に炎の戦車を』『しゃばけ』『さらば八月の大地』と話題作を生み出している。2014年春、紫綬褒章受賞。
出演
池内博之、浅野雅博、尾上寛之、丸山厚人、木津誠之
チョウヨンホ、岩男海史、中西良介、平田満
お問い合わせ
北九州芸術劇場
TEL 093-562-2655(10:00~19:00)
備考
主催/(公財)北九州市芸術文化振興財団
共催/北九州市